通販用のパッケージと小売用のパッケージでは大きく役割が異なります。お客様が広告やインスタの画像、LPからの情報を経てから購入する場合と、店舗に足を運んで棚に並んでいる中からあなたの商品を取ってもらう場合では、購入までの商品に対する情報量に大きな差があるからです。言い換えますと、中小企業が特定の商品を通販から小売り(卸売り)に展開する場合にはパッケージに加える情報が増えるためにデザインを大きく変更することがほとんどですし、小売り(卸売り)から通販に展開する場合には不要な情報をそぎ落としてパッケージをシンプルに変更することが多いです(パッケージの変更には、容量や商品名の変更も加わるケースがあります)。
では具体的にどのような部分で異なるのかを説明していきます。まずは購入に至るまでのステップを考えてみましょう。
●通販の場合
- 広告がお客様の目に留まる
- お客様が思わずLPのリンクをクリックする
- LPを読んでお客様に商品のメリットが伝わる
- 最後にお客様の背中を押し、商品を購入してもらう
●小売りの場合
- 商品のパッケージがお客様の目に留まる
- お客様が思わず商品を手に取る
- パッケージを読んでお客様に商品のメリットが伝わる
- 最後にお客様の背中を押し、商品を購入してもらう
基本的には同じステップを踏みます。小売りの場合では、この1~4を行動に移してもらうための要素をすべてパッケージ内に詰め込む必要があります(もちろん、のぼりを立てたり、小型の液晶画面で映像と音声を流したり、マネキンさんによる試食販売を実施したり、プライスカードやPOPを付けるなどで、興味を惹かせる手法を加えるケースもあります)。
ですが、通販の場合ではパッケージに情報を詰め込む必要がなく、購入に至るまでに広告、レシピ、原料、製造方法、栄養、社長の思い、工場の環境、お客様の声などについて、写真や動画を交えて商品に関する情報を十分に見せることができるのです。また商品を購入いただいた際には、同梱物としてチラシやリーフレットからも情報を伝えることができます。
よりイメージをわかりやすくするために、お客様が購入に至るまでの具体的な行動を見てみましょう。
(お客様が購入に至るまでの具体的な行動の流れ)
・通販の場合
広告を見る ⇒ 商品の詳細を知りたくなり思わずクリックする ⇒ LPをじっくり読む ⇒ 購入するかどうかを検討する ⇒ 商品をカートに入れる ⇒ 購入する
・小売り
来店する ⇒ 売り場へ行く ⇒ 商品が目に留まる ⇒ 思わず商品を手に取る ⇒ 商品説明を読む ⇒ 購入するかどうかを検討する ⇒ 購入する
通販と小売りの場合では、パッケージの役割が全く異なってくることが理解できてきたのではないでしょうか。
少し視点を変えパッケージの観点から説明しますと、小売りでは遠くからでも目に留まるような色や写真が必要で、手に取ってもらいやすい形や量になっており、読みやすい文字の大きさで、お客様にとってのメリット(おいしさが伝わるようなキーワード、栄養、食べやすさ、手軽さ、簡単さなど)が書かれている、といった要素が重要でした。これらの要素をパッケージの中にすべて詰め込む必要があったのです。
しかし通販の場合であれば、パッケージに上記で記載したような要素を含める必要はなく、価格に見合った荷姿で、商品の雰囲気に一致した色合いと質感で、必要最低限の情報が記載されていればよいということになります。つまり、小売りの場合と比べますと、シンプルなパッケージデザインになっても構わないのです。
なお通販の場合はファンが獲得できますと、プレミアム商品の販売やギフト商品による売上アップが可能となりますので、その際には新たにパッケージを制作し、高級感の加わった価格に見合ったものにすることが重要なポイントになってきます。
また、通販の場合であれば、競合する他社商品と並べてパッケージを制作する必要性はかなり低いものとなりますが、小売りの場合では必須です。実際の売り場にて他社製品と試作品を棚に置いて並べてみながら、先に記載した4つのステップの要素を含めたパッケージデザインを制作していきます。
一方、通販の場合にはパッケージではなく、広告やLPを競合他社と比較しながら制作する必要があります。
ただし、通販・小売りのどちらの場合においても、パッケージのデザインだけで試作品の制作を進めることは厳禁です。複数のパッケージデザインだけを見比べて、パッケージを決めることはやめてください。必ずパッケージの中に商品を入れ、重ねたり、立たせたり、箱に詰めてみるなどを行いながら、最終的なパッケージのデザインを決めていく点は、通販でも小売りでも共通しています。ここを怠ると本当に痛い目に遭います。
いかがでしょうか。
現行のあなたの主力商品のパッケージや広告、LPを見直すきっかけになれば幸いです。
※ 余談とはなりますが、もし小売りを行っている商品があれば、パッケージ内に先の4つのステップの要素が含まれているかをご確認ください。加えて実際の売り場を見て、他社商品と比較することも行ってみてください。もしパッケージ内に含まれていない要素や弱い要素があれば、その部分を改善することで売上がアップする可能性は大いにあります。